(読むために必要な時間) 1分50秒
警察庁が公表した竹村達也の情報が掲載されたウェブページ 、職業は「公務員」となっており、旧動燃の科学者だったことは公表されていない
私は、旧動燃の科学者で竹村達也の部下だった科学者から、失踪した竹村について調べてほしいといわれた。私はすぐその名前をインターネットで検索した。ヒットしなかった。2012年の夏のことだ。
旧動燃の関係者に取材した。
関係者のほとんどは、竹村が失踪したことは知っているものの、茨城県警の刑事が口にした「北に持っていかれたな」の「北」が、何を指しているのかについては分からなかった。
公安部のキャリアだった警察OBにも尋ねた。「本当だったら大変なことだ」というだけだった。私はいったん、取材を中断した。
それから5年がたった。
2017年6月、私が朝日新聞を辞めてワセダクロニクルを立ち上げ、これまでの取材でやり残していることをパソコンの中にある取材メモを見ながら整理している時だ。何気なく「竹村達也」の名前をインターネットで検索してみた。すると……、ヒットした。
警察庁のホームページに〈拉致の可能性を排除できない事案に係る方々〉という項目があり、そこに 竹村の名前が掲載されていた。
茨城県警の刑事が口にした「北に持っていかれたな」の「北」とは、やはり北朝鮮のことだったのだ。
なぜ、2012年にはなかった竹村の情報が、警察のホームページにアップされていたのか。
警察庁が「拉致の可能性を排除できない事案に係る方々」をホームページにアップしたのは2013年6月のことだ。864人をリストアップし、家族の同意を得られた場合は、本人の写真と情報を掲載した。
2013年6月に開かれた公安委員会で、委員長の古屋圭司はその経緯を説明している。
「安倍内閣となって、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くすという方針とされたところである」
「その一環として、警察においては、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案ついて、所用の捜査・調査を進めてきた」
「北朝鮮との関連性を示す情報を含め、広く国民からの情報提供を求めるため、御家族の同意が得られたものについては、事案の概要や関係者の写真等を都道府県警察のウェブサイトに公開することとした」
安倍政権は公開捜査に踏み切った。だがそれは、とても本気とは思えないものだった。
(敬称略)
=つづく
*北朝鮮による拉致の目的とは何か、日本は核を扱う資格がある国家なのか ──。旧動燃の科学者だった竹村達也さんの失踪事件について、独自取材で迫ります。この連載「消えた核科学者」は「日刊ゲンダイ」とのコラボ企画です。「日刊ゲンダイ」にも掲載されています。
- 竹村達也さんについての情報をお待ちしています。強力なセキュリティをかける連絡方法も用意しています。プロバイダーがあなたの通信内容を政府機関に提供したり、政府機関が何らかの方法であなたの通信内容を把握したりすることは不可能になります。こちらをお読みいただき、情報をお寄せください。