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フィリピンのオンラインメディア「ラップラー」(Rappler)の編集長兼最高経営責任者、マリア・レッサ(Maria Ressa)さんが政府の攻撃に晒されています。2016年にロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領が就任して以来11回訴追され、8回刑事告訴され、2回逮捕されました。
2020年6月15日には、ラップラーでの執筆者と共にサイバー名誉棄損法で有罪判決を受けました。上訴審でも有罪が確定すれば、禁固6年の刑を受けます。
ワセダクロニクルは、レッサさんへの攻撃はプレスの自由への攻撃と受け止め、レッサさん及びラップラーと連帯します。
法律ができる前の記事を罪の対象に
有罪判決で対象になった記事は、フィリピンでもトップ40に入る富豪の実業家と、元最高裁長官との癒着に関するものです。裁判では実業家の名誉を毀損したと認定されました。
しかし、記事が発表されたのは2012年5月で、サイバー名誉毀損法はその後の2012年9月にできた法律です。2014年2月にラップラーがスペルミスを修正したことから、新たな記事として法適用の対象にしたのです。レッサさんのジャーナリズム活動を妨害するための裁判と言わざるを得ません。
レッサさんは、ドゥテルテ大統領の「権力による罪」を追及してきただけで、罪を受ける理由はありません。裁きを受けるべきはドゥテルテ大統領の方です。
例えばラップラーは、ドゥテルテ大統領の「麻薬撲滅戦争」を批判してきました。ドゥテルテ政権は、「容疑者」とみなした人を少なくとも8663人殺しました。「少なくとも」というのは、この数字がフィリピン当局の発表だからです。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2020年6月4日、組織的な「超法規的殺人」に対して是正を勧告すると共に、当局が発表した殺害者数は実際よりも少ない疑いがあると報告しています。
またラップラーは、ドゥテルテ大統領支持のネット上の声が偽のアカウントで拡散されていたことを追及していました。
ジャーナリストへの攻撃は民主主義への攻撃
レッサさんへのドゥテルテ政権による攻撃は決して、フィリピン国内だけの問題ではありません。国境なき記者団によると、2019年に取材活動で殺害されたジャーナリストは世界で49人。投獄されたジャーナリストは、ジャーナリスト保護委員会によると、2019年は250人を超えました。日本でも安倍政権になってから特定秘密保護法が成立し、プレスの自由が脅かされています。
2019年9月、ドイツのハンブルグで「世界探査ジャーナリズム会議」(Global Investigative Journalism Conference)が開かれ、レッサさんのスピーチがありました。
レッサさんはいいました。
「ジャーナリストが攻撃を受けている時、民主主義は攻撃を受けています」
「古いしきたりは捨てなさい、ジャーナリストは協力し合うのです」
そして、呼びかけました。
「コラボレート! コラボレート! コラボレート!」
世界中から集まった1700人のジャーナリストたちが一斉に立ち上がって拍手を送りました。
その中にはワセクロから参加した9人もいました。ワセクロはレッサさんの呼びかけに呼応し、どんな権力に対してもプレスの自由が脅かされれば全力で闘います。
そして連帯の輪が広がるよう、同じ職業人としてのジャーナリストと、民主主義のためプレスの自由を必要とする全ての人に呼びかけます。
「コラボレート! コラボレート! コラボレート!」
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