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竹村達也が通った大阪府立天王寺高校=2020年4月11日午後0時53分、大阪市阿倍野区三明町、渡辺周撮影
竹村達也の出身高校は、大阪府立天王寺高校だ。大阪で指折りの進学校であると同時に、ラグビーの名門校としても知られる。
私も大阪育ちで、府立生野高校の出身だ。ラグビー部に所属し、天王寺高校に試合に行ったこともある。25年ぶりに天王寺高校の周辺を歩き回り、竹村の高校時代の同級生の1人の住所を探し出すことができた。
インタフォーンを押すと、男性が出た。私が「天王寺高校の卒業生の竹村達也さんのことを取材しています」と用件を告げると、その男性はいきなりいった。
「なんや、北朝鮮の拉致のことかいな」
私は驚いた。
こちらは竹村について取材をしているといっただけだ。なぜ北朝鮮による拉致疑惑を取材しているとわかるのか。ほかのメディアがすでに取材に来たのか。
男性は私を玄関に通してくれた。竹村の同級生本人だった。
「4年くらい前やったかな、大阪府警から電話がかかってきてな。竹村のことで何か知らんかって聞かれてん。ほかにも天高から阪大の工学部に進んだやつとか、高校の同じ組のやつとかに警察は聞いて回ってたみたいや。僕ら同級生でしょっちゅう集まってんねんけど、その時に同じように警察から電話があったという話になってん」
大阪府警は竹村の捜査を継続していたのだ。
府警はその同級生に、竹村の情報を尋ねただけなのだろうか。その目的は伝えなかったのだろうか。
「それがな、警察がいうにはな、どこやったっけ、群馬やなくて、そう、茨城県にある動燃。竹村は阪大出て動燃に就職したらしいんや。そこで核のことをやってたから、北朝鮮に拉致されたんとちがうかと。そういう話や。僕の友達も警察から電話きた時は、同じこといわれて」
警察は明らかに、核科学者の失踪と北朝鮮を結びつけている。竹村が動燃でプルトニウム製造係長まで務めた核科学者であるからこそ、北朝鮮による拉致を疑っていたのだ。
しかし警察は、竹村の情報を2013年にホームページにアップした時、掲載している住所は「茨城県那珂郡」まで。動燃を想起させる「東海村」とまでは書かなかった。
職業も「公務員」にとどめて具体的に書かなかった。
動燃は政府が管轄する核の研究所だ。竹村は、核兵器に使えるプルトニウムを扱う科学者だった。警察は、そのことを明らかにしたくなかったのだ。
(敬称略)
=つづく
*北朝鮮による拉致の目的とは何か、日本は核を扱う資格がある国家なのか ──。旧動燃の科学者だった竹村達也さんの失踪事件について、独自取材で迫ります。この連載「消えた核科学者」は「日刊ゲンダイ」とのコラボ企画です。「日刊ゲンダイ」にも掲載されています。
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