Tansaが日本外国特派員協会で記者会見、悪質な新聞販売の実態を報告

2021年04月13日17時09分 辻麻梨子

Tansaは4月7日、高齢者を狙った悪質な新聞販売の実態を報告する記者会見を、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で開いた。オンラインでも同時中継され、約70人が視聴した。編集長の渡辺周と逐次通訳としてリポーターのアナリス・ガイズバートが登壇した。

当日の会見の様子はこちらから視聴可能だ。

記者会見を開いたのは、現在も規制されることなく被害が拡大する押し売りの実態をできるだけ多くの人に伝えることが目的だ。全国紙をはじめとする新聞社や、系列のテレビ局は新聞の押し売り問題を取り上げない。

そのため、ネットメディアなども報道ができるよう、Tansaが国民生活センターに対する情報公開請求を通じて入手した資料も提供した。

会場になった日本外国特派員協会は、日本で取材活動をする海外メディアの記者やジャーナリストたちの拠点だ。

新聞の押し売り問題には、背景に日本特有の事情がある。日本の新聞は各家庭に新聞を配達する宅配制度によって、一時期は世界最多の発行部数を誇るまでに拡大した。しかし発行部数は年々減少し、2020年度には全国紙・地方紙・スポーツ紙を合わせた発行部数が前年から比べて272万部減った。減少幅は過去最大であり、急速に読者が減っていることを背景にした押し売り被害が生まれている。海外のジャーナリストにも、こうした視点で新聞販売の問題を取り上げてもらうことを狙った。

主な質疑応答は以下の通り。

・現在日本のメディアでスクープを連発しているのは週刊文春ばかりであることについて、どう思うか。

新聞は読者の信頼を失っているだけでなく、告発者の信頼も失っている。文春は戦うが、新聞は途中で折れてしまうからだ。例えば先日、東京五輪の組織委員会から文春に対して、発売中止と回収の要求があった。しかしそれに対して、同業者として声を挙げた新聞があっただろうか。朝日新聞は記事で取り上げていたが、組織委員会と文春の意見の両論併記にとどまり、自分たちのスタンスは示していなかった。

・日本の新聞社は急速に部数が減っているが、今後どうなるのか。

日本の新聞社はとにかく組織が大きすぎる。ピーク時の発行部数は、読売新聞で約1000万部、朝日新聞で約800万部。その部数を支えていたものこそ宅配制度だった。記者の人数も多いが、現在ではそれが重荷になっている。

私が新聞社の立場に立って答えるとしたら、規模を大幅に縮小して、アマゾンやヤフーといったIT企業などと合併するしかないのではないか。ただし、新聞社は潤沢な資金と人材をもとに、これまで一人前のジャーナリストを育てる教育機関としての役割を担ってきた。インターネットで情報発信自体は誰でもできるが、やはり取材力を備えたジャーナリストは社会にとって必要だ。新聞社が負担してきた教育コストを誰が払うのかが問われる。

・なぜ日本にはTansaのような組織が少ないのか。

まだ社会にジャーナリズムを寄付で支える、という土壌がないのではないか。ただし大事なのは「日本には寄付文化がない」などと、文化のせいにするのではなく、当事者であるジャーナリストがリスクをとって挑戦することだ。Tansaのメンバーもみんな、このリスクをとっている。そうした人が出てこない限り、日本社会も盛り上がらない。

 

シリーズ「高齢者狙う新聞販売」で報道してきた通り、認知症や目が見えない高齢者に対する新聞の押し売りが絶えず、コロナ下でも行われていることがわかっている。Tansaでは引き続きこの問題を取り上げていく。

会見の様子を伝える記事が掲載されました。

・弁護士ドットコム

https://www.bengo4.com/c_8/n_12919/

・トリビューンニュース(インドネシア)

https://www.tribunnews.com/internasional/2021/04/07/penerbitan-koran-jepang-setahun-berkurang-25-juta-eksemplar-mungkin-10-tahun-lagi-hilang

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