ワセクロの五感

痔になりハゲる 製薬マネーデータベース作成の苦悩(17)

2020年08月12日6時20分 友永翔大

医師と製薬会社の間のお金の流れを誰でも確認できるマネーデータベースの2017年度版を8月5日に公開しました。作成に約3000時間を要した2016年度版と同様、データの精度を高めたいと思うほど、今回も身を削るような作業が必要となりました。

 

憂鬱になる作業の一つが、同姓同名のチェックです。同じ名前で所属の異なる複数の医師がお金を受け取っていた場合、同一人物なのか同姓同名の別人なのかを確認するためです。医師名をGoogleなどで検索し、顔写真や経歴などから判別します。

 

特に大変なのが、佐藤、鈴木、斎藤・・・・・・などの苗字が集まる「サ行」。通常、同姓同名の医師は2、3人程度ですが、「鈴木聡」という名前の医師は9人もいました。9人の判別には20分以上かかり、集中力が途切れそうになります。同姓同名チェックが必要な医師は約4800人。確認作業がなかなか進まず、データ提出の締め切りも迫ってくると現実から逃げたくなることが何度もありました。

 

2017年度版の同姓同名チェックは、今年の1月末から2月中旬にかけて行いました。私はストレス発散のため、ミント味のガムを噛み続けました。朝から晩まで木製の丸イスに座りっぱなしの日々。いつの間にかアゴが筋肉痛になり、生まれて初めて痔になりました。

 

山積みの作業と締め切りに追われるストレスから、ついには私の頭頂部に小さな10円ハゲまでできたのです。ショックでしたが、何よりここまで体に負荷がかかっていたことに驚きました。医師にマイナンバーのような個別の番号が割り振られていれば、同姓同名チェックも不要なのに・・・。こんな作業をなぜ続けているのか、自分でもときどき不思議に感じます。

 

10人ほどのメンバーが仕事や学業の合間を縫ってコツコツと1年かけて作る製薬データベース。膨大な作業量を考えると、本来は厚生労働省や製薬会社に作成してほしいと思わずにはいられません。しかし、ワセクロと医療ガバナンス研究所という非営利の民間団体だからこそ、大企業や大学の顔色をうかがわずに公開できたのだと思います。

 

前回の公開後、データベースはマスコミだけでなく、国会でも取り上げられました。衆議院の厚生労働委員会の質疑でデータベースが引用されたと知った日は、一日中ソワソワした気持ちに。私たちの取り組みが、社会を動かす原動力になったことを実感しました。データベースを見た人から「体調に気をつけて頑張ってほしい」という応援メッセージをいただくと、「今年も頑張って作っていこう!」と気持ちが引き締まります。

 

それでは、本日も2018年度版の公開に向けて作業を続けます。

リポーター 友永翔大

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