ワセクロの五感

文鳥(10)

2020年06月09日14時40分 辻麻梨子

 

家に一人でいることが長くなってきた4月末、私は文鳥を飼うことにした。黒と白のごま塩模様に、赤い大きなくちばし。名前は「とりのしん」。鳥に「とり」と名付けるのはおかしいと、テレビ通話越しに姉に笑われた。

とりのしんは毎朝7時頃に起きてピッピッと鳴き始める。水と木の実などの餌を1日1回取り換えるだけなので、世話も手軽だ。好きな食べ物は豆苗。ギョッとされるが、ゆで卵の黄身もよく食べる。

水浴びが日課で綺麗好きだ。容赦無く水を跳ね飛ばすので、洗面所に連れて行き、手の中で存分に水浴びさせる。窓を開けていると、聞こえてくるカラスやスズメの鳴き声に反応する。同じ鳥だとわかっているようだ。

私の姿を見ると出してほしそうにバタバタと騒ぐ。テレワークの電話会議中にピヨピヨと鳴くこともあり、「鳥の鳴き声が聞こえない?」など不思議がられ、話が盛り上がることもしばしば。鳥かごから出してやると、肩や手の上にとまって、そのまま寝てしまう。眠い時は足が温かくなるのでわかる。とても可愛い。

あまり知られていないが、文鳥は愛情深い生き物だ。実家で暮らしていたときも2羽の文鳥を飼っていた。どの鳥も、人と生活するのが好きなようだった。一人暮らしになって生活習慣が乱れていた私も、とりのしんのおかげで早寝早起きをするようになった。

家の外に出ると、不安なことや理不尽なこともある。そんなとき私はいつもより急いで家に帰り、とりのしんの体温を手のひらにそっと感じてみる。

リポーター 辻麻梨子

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