2月末、私は久しぶりに公園で鬼ごっこをしました。板橋区にある「まいにち子ども食堂高島平」を取材した後のことです。子どもたちに急かされてブランコや滑り台が並ぶ広い公園まで出かけ、1時間半走り回りました。
「次はいつ来るの?」。私が帰らなきゃと言うと、4歳の女の子は帰り際に呟きました。「いつ来たら会えるの?」私が聞き返すと、女の子はいいました。「毎日いるよ」
「まいにち子ども食堂高島平」は365日、朝から晩まで開いています。貧困家庭の子どものため、無料で3食提供しています。子どもの中には、親が病気だったり育児放棄をしたりして、家では面倒をみてもらえない子たちがいます。子ども食堂は食事だけではなく、居場所としての役割も兼ねているのです。
コロナウイルスの影響で学校が休校になりました。図書館や公民館も軒並み閉鎖です。全国で3700以上ある子ども食堂も多くが休止になっています。しかし、私が取材した板橋の子ども食堂の六郷伸司さん(54)は、「居場所のない子どもたちのために腹を括る」と手洗いや消毒を徹底して子ども食堂を開き続けています。六郷さんを頼って毎日通ってくる子どもたちの顔を見ているからでしょう。
私もふとした時に、4歳の女の子の姿が目に浮かびます。公園までの道のり、手を繋いで歩きました。あの子が今日も誰かと手を繋げていますように、と願います。その小さな手の温もりが一人でも多くの人に伝わるように、記事を書き続けます。
リポーター 辻麻梨子
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