高齢者狙う新聞販売

新聞社回答、全国紙と地方紙の差とは?(6)

2021年04月06日15時23分 渡辺周

認知症の高齢者らに、新聞を押し売りする事例が頻発していることを、本シリーズでは報じてきた。国民生活センターには、月100件を超える相談が、高齢者の家族や介護者から寄せられている。

ではそれに「売る側」の新聞社はどう対処しているのか。Tansaは全国の新聞社50社に2021年1月、質問状を送った。

回答があったのは、毎日、朝日、産経、日経の全国紙4紙を含む21社。そこから見えてきたのは、高齢者への悪質な新聞販売に関する全国紙と地方紙の差だった。

毎日、「根絶には至っていない」

質問状では以下の点を聞いた。

①認知症の高齢者らに強引に新聞を売りつける行為を把握しているか

②把握している場合はどのような対策を取っているか

全国紙の回答は以下の通りだ。日経新聞以外は、高齢者への悪質な販売が行われていることを否定しなかった。

毎日新聞社。高齢者への押し売りに関する苦情があることを認めている。

「高齢者を含め勧誘の際には、関係法令の遵守に努めるよう注意喚起するなど、販売店には適正な勧誘を行うよう常日頃から呼びかけております。具体的な相談や苦情、問い合わせ等について、外部にはご説明しておりませんが、以前より件数は減少しているものの根絶には至っておらず、引き続き適正化に努めて参ります」

朝日新聞社。悪質な販売について、明確な回答がない。

「新聞販売店が行う購読勧誘などの営業行為については、法令順守の下に行っています。高齢者に関わらず、訪問営業でトラブルが生じた場合には、速やかに改善を図るよう日頃から指導しています」

産経新聞社。これも悪質な販売について、はっきりした回答がない。

「特定商取引法の順守をはじめ新聞販売のルールを取引先である販売店に徹底するよう、日ごろから指導しています。高齢者を中心に消費者とのトラブルには、さらに注意するよう要請しています」

読売新聞社は無回答。電話で催促したものの回答がなかった。

経済紙の日本経済新聞社は、悪質な販売は把握していないと明確に否定した。

「ご指摘いただいた問題について相談や苦情、問い合わせは寄せられていません。当社は特定商取引法はじめ販売ルールを順守徹底するよう社員や販売店を指導しており、問題を確認すれば調査のうえ厳正に対処します」

地方紙は押し売り否定、「販売員を登録し、ネームプレート着用」

一方で地方紙の回答はすべて、「高齢者への悪質な販売はない」という内容だった。

デーリー東北新聞社

「弊社では悪質な新聞販売が行われておりません」

 

山形新聞社

「指摘されるような事案は承知しておりません」

 

北日本新聞社

「国民生活センターの公表資料で、高齢者との消費者トラブルがあることは把握しているが、当社の新聞販売の現場におけるものは聞知していない」

 

福井新聞社

「福井県内の各消費者センターに新聞関係のクレームや相談がないか、定期的に聞き取りしています」

「当社では、そうした行為を防止するためセールススタッフを登録制とし、ネームプレートの着用、契約カード記入の徹底を指導しています。定期的に講習会や情報交換を実施しています」

 

静岡新聞社

「弊社に直接かかわる事案へのお尋ねではないと拝察いたします。そのため、回答はいたしかねます」

 

信濃毎日新聞社

「弊社で高齢者に対する悪質な販売の実態があるとの認識はありません。そうした問題が起きないよう、日常的に現場に指導をしています」

 

山梨日日新聞社

「ご指摘のような行為は把握しておりません。弊社への苦情などは特段ありません」

 

岐阜新聞社

「『悪質な新聞販売』の苦情や相談は認識しておりません」

 

奈良新聞社(社としては無回答、販売担当者としての回答)

「私が担当した直近2年間で、弊紙に関して『高齢者に対する悪質な新聞販売が行われている』事例は聞いていません」

 

中日新聞社

「販売局員が愛知県、名古屋市など主要な消費生活センターへ定期的に訪問し、弊社販売店等の新聞販売に関する読者からの苦情相談内容を聞き取りしています。最近の訪問結果ではご指摘にあるような高齢者への悪質な新聞販売を含め、具体的な改善指導の事例はみあたりません」

 

四国新聞社

「弊社販売店による高齢者に対する悪質な新聞販売行為はないと認識しております」

 

徳島新聞社

「高齢者に対して悪質な訪問営業は行っていないと認識しています」

「弊社販売店は徳島県内の全24市町村と高齢者見守り活動の協定を結び、高齢者の安全・安心のために日々活動しています。特殊詐欺被害防止を目的に自治体が設立した『消費者見守りネットワーク』の取り組みにも積極的に協力しています」

 

愛媛新聞社

「弊紙の販売現場ではご指摘のような事案の情報はありません」

 

高知新聞社

「相談や苦情、問い合わせはありません」

 

中国新聞社

「弊社に寄せられた情報はなく、把握していません」

 

西日本新聞社

「系列販売店には、高齢者か否かにかかわらず適正な営業活動を求めており、訪問時に未成年や認知症と判断した場合は営業対象としないよう指導しています。弊社では、ご指摘にあるような認知症に乗じた契約行為は把握しておりません」

 

沖縄タイムス社

「弊社発行の新聞販売現場においては悪質な新聞販売は行われておらず、沖縄県消費生活センターに寄せられた新聞訪問販売にも報告がありません」

読売、北海道、河北など29社が無回答

期限までに回答がなかった社には、電話やメールで催促したものの、29社は回答に応じなかった。全国紙では、読売新聞社だけが回答がなかった。

無回答の社は以下の通り。

読売新聞社、下野新聞社、茨城新聞社、千葉日報社、神奈川新聞社、埼玉新聞社、上毛新聞社、河北新報社、秋田魁新報社、福島民報社、福島民友新聞社、北海道新聞社、岩手日報社、東奥日報社、神戸新聞社、北國新聞社、京都新聞社、伊勢新聞社、山陽新聞社、みなと山口合同新聞社、新潟日報社、長崎新聞社、大分合同新聞社、南日本新聞社、熊本日日新聞社、佐賀新聞社、琉球新報社、宮崎日日新聞社、山陰中央新報社

=つづく

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