日本製薬工業協会(製薬協)の加盟社が、2017年度に医師個人に支払った講師謝金、学会や大学の研究室への寄付金をワセダクロニクルが集計した。その結果、医師個人に支払った金額は計273億円で、2016年度よりも9億円増えた。大学の研究室や学会などへの寄付金は個人への支払いよりも多い、計357億円だった。
講演会の会場費などに1195億円
医師個人への支払いの内訳は、講演会の謝金が231億円、コンサルタント料が30億円、原稿執筆・監修料が11億円で、講演会の謝金が引き続き大きな割合を占めている。講演会で使うホテルの会場費や医師への交通費、資料代などが含まれる「情報提供関係費」は、計1195億円。「社会的儀礼」としての「接遇費」は、計46億円だった。(数字は全て千の位を四捨五入)
データベースでガラス張りに
ただ、全体的な傾向がわかっても、医師個人と製薬会社との関係、学会や大学の研究室と製薬会社との関係は浮かび上がってこない。処方されている医薬品が「製薬マネー」によって何らかの影響を受けているかを、患者や家族らが判断する材料としては不十分だ。
このため、ワセクロと医療ガバナンス研究所は今年1月、医師が製薬会社から個別に受領している金額を検索できる「製薬マネーデータベース」を作った。製薬各社が各社のホームページで公表した2016年度のデータを約3,000時間かけて統合した。
データベースがあると医師と製薬会社との関係が次々にガラス張りになった。
例えば、薬の値段を決める中央社会保険医療協議会(中医協)の「薬価算定組織」の当時の委員11人のうち、委員長の秋下雅弘・東京大学教授(老年病科)ら3人の委員が受け取った金額は、それぞれ1,000万円を超えていた(*1)。
2017年度分は寄付金項目加えて
製薬マネーデータベースについては、日本学術会議の臨床試験制度検討分科会が2014年、製薬協が作成するように提言している(*2)。
「製薬協は、各企業が開示する医療施設・機関等、医師への支払額などの情報を、全てデータベース化する。また、各企業は、公表した全ての項目について社会から疑義等が指摘された場合、迅速に調査を行い、疑義等を払拭する説明責任を適切に果たさなければならない」
ところが、製薬協はデータベースをつくっていない。ワセクロと医療ガバナンス研究所は、製薬各社のデータが出揃った2017年度分のデータベースも作る。
2016年度分のデータベースは、製薬会社から医師個人への支払いに限定した。
2017年度分は、医師個人への支払いに加え、学会や大学の研究室への寄付金もデータベースに加える。
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データベースの作業状況については随時、みなさんにお知らせしていきます。
〈脚注〉
*1 「【特集】製薬マネーと医師(2)」を参照。
*2 日本学術会議科学研究における健全性の向上に関する検討委員会臨床試験制度検討分科会「提言 我が国の研究者主導臨床試験に係る問題点と今後の対応策 」2014年、12頁、日本学術会議ウェブページ(2018年5月31日取得、http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t140327.pdf)。
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