強制不妊の被害者に一時金320万円を支払う補償法案が2019年4月24日、参院本会議で可決された。安倍晋三首相は「真摯に反省し、心から深くお詫び申し上げます」と被害者に謝罪する談話を出した。
1948年にできた旧優生保護法では、「不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に、遺伝性とされた疾患や障害を持つ人たちに強制的に不妊手術を実施した。被害者は1万6500人を超えた。
ワセダクロニクルは、厚生省が都道府県に強制不妊手術の件数を増やすよう要請し、自治体間で競争が起きていたことを「厚生省の要請で自治体が件数競い合い、最多の北海道は『千人突破記念誌』発行」で暴露した。手術をした人数が2593人と全国で最も多かった北海道は「優生手術(強制)千件突破を顧りみて」というタイトルの記念誌まで発行し、「件数においては全国総数の約五分の一を占め他府県に比し群を抜き全国第一位の実績を収めている」と誇った。
NHKまで当事者になった「翼賛体制」
国会議員の提案で作られた今回の法律では、前文に「我々は、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする」という文言が入った。
強制不妊手術をめぐっては行政だけでなく、医師、弁護士、検察官、裁判官が手術の適否を決める審査に加わった。
さらに、ワセクロが宮城県内の被害女性の半生を描いた連載では、NHKの経営委員や地元新聞社の河北新報社会長が「優生手術の徹底」を掲げる団体の幹部を務めていたことが明らかになっている。
強制不妊手術の実行のため、あらゆる職種や団体が一致協力する様は、戦時中の「翼賛体制」に似ている。強制不妊をめぐる「翼賛体制」を、本当に「それぞれの立場において」反省し、同様のことを繰り返さないようにするのか。ワセクロは引き続き検証する。
被害者弁護団とワセクロで5月27日にシンポ
一時金を支払う法律ができたとはいえ、被害者が本当に救われるにはまだ課題が多い。
ワセクロは5月27日、国に訴訟を起こしている被害者の東京弁護団と共に早稲田大学でシンポジウムを開く。今回の法律の問題点と、救済のために必要なことを共に探る。
シンポの詳細は後日、改めて告知します。
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